DT-IMG_0552

まっぷるマガジン編集部

更新日:2020年4月13日

この記事をシェアしよう!

ドイツの文学シーンを巡る

ドイツ文学とはドイツを含むドイツ語圏の文学を指す。ここでは中世の英雄伝説からゲーテ、シラー、ドイツロマン主義、グリム兄弟らの足跡を概観する。

宗教改革と印刷術普及が画期的

中世の11〜14世紀には宮廷文学が盛んとなる。英雄伝説を土台とする『トリスタンとイゾルデ』『パルシファル』『ニーベルンゲンの歌』などが知られる。またミンネザンクと呼ばれる叙情詩も発展。16世紀になるとマルティン・ルターによる宗教改革が始まるが、このときルターは聖書をドイツ語に翻訳している。民衆のための読本も人気が高く『ティル・オイレンシューピゲル』などが有名。18世紀になると啓蒙主義の時代となるが、その反動でシュトルム・ウント・ドランク(疾風怒濤)の運動が起こる。ゲーテの『若きウェルテルの悩み』やシラーの『群盗』などが書かれ大きな話題となった。ワイマール古典主義の時代にはフリードリヒ・ヘルダーリン やジャン・パウルが活躍する。

Fotolia_177827901_Subscription_Monthly_M
by fotolia - ©tech_studio

多彩なロマン主義の顔ぶれ

合理主義に対し感受性などを重要視するロマン主義。初期ロマン主義の中心的作家として『青い花』などで知られるノヴァーリス(1772~1801)がいる。本名はフリードリヒ・フォン・ハイデンベルク。12歳の聡明な少女ゾフィーに出会ったのはノヴァーリスが22歳のときだった。婚約するがゾフィーは15歳で夭折してしまう。ノヴァーリスはゾフィーを神秘化しており、彼女への思いは「ゾフィー体験」といわれ、ノヴァーリスのロマン主義思想に多大な影響を与えたという。この体験は美しい『夜の賛歌』に結晶する。

ロマン主義作家としてほかにティークやシュレーゲル兄弟、アルニム、ブレンターノ、グリム兄弟、E.T.A.ホフマンらがいる。

ナチズムへの怒りと弱者の孤独

トーマス・マンが一家の歴史を綴った自伝的小説『ブッテンブローグ家の人々』を完成させたのは1901年。この作品はベストセラーとなり、マンは一躍名声を得る。代表作には『ヴェニスに死す』『トニオ・クレーガー』『魔の山』などがあるが、ナチスが台頭するとスイスやアメリカに亡命した。1929年にノーベル賞を受賞。『ヴェニスに死す』はルキノ・ヴィスコンティによって1971年に映画化されて話題となった。

ドイツ南部のカルフに生まれたヘルマン・ヘッセは、青年期には精神的にかなり不安定な時期を過ごしており、神経科病院に入院したこともある。さまざまな仕事に従事しながら独学で文学を学び、執筆を続けた。代表作に『車輪の下』『デミアン』『ガラス玉演戯』などがある。

Hermann Hesse Calw
by fotolia - ©kleiner Fotograf

二人の作家の数奇な運命

現在のポーランドのグタニスクで生まれたギュンター・グラスは『ブリキの太鼓』で一躍有名になったが、ほかに『猫と鼠』『ひらめ』などの作品があり、1999年にノーベル文学賞を受賞している。しかし、2006年にかつてドレスデンでナチの武装親衛隊に所属していたことを告白。強い批判を受けた。また、グラスがメンバーだった作家集団47年グループは現在は解散している。
また、ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデはガルミッシュ・パルテンキルヒェンで1929年に生まれている。『ジム・ボタンの機関車大旅行』がドイツ児童文学賞を受賞した。おもな作品に『モモ』『はてしない物語』『遺産相続ゲーム』などがある。

数百年の時空を超えてドイツ文学のエッセンスへ 

これだけの個性が集まると壮観。辞書の編纂に作家達の言葉が集められた。

100年以上の時間をかけて完成をみたグリムのドイツ語辞典

グリム兄弟がドイツ語辞典の編纂に手を付けたのは1838年。最終巻が配本されたのは1961年だから、完成までに120年以上の歳月が流れたことになる。ルターからゲーテにいたる文献からあらゆる語彙を採取して編集するという膨大な計画で、もちろん兄弟の存命中には完成しなかった。全16巻33冊の中には言葉が持つさまざまな歴史・物語がぎっしりと詰まっている。ドイツ語を研究・勉強する人にとってはまさに宝の山であろう。

DT-germany_hanau 084

グリム兄弟
古くから伝わる民話などを集めた『子供と家庭の童話集』はドイツ文学の原型とされる

DT-Weimar20121020_42

ゲーテ&シラー
疾風怒濤から古典主義へ。ワイマールでの2人は固い友情で結ばれ、それぞれが代表作を発表していく

DT-germany_dusseldorf 003

ハインリヒ・ハイネ
『旅の絵』など美しい紀行文を書いたが、一方で政治詩『ドイツ冬物語』なども発表。フランスに亡命した

ノヴァーリス
代表作『青い花』はロマン主義小説を代表する作品だが、2部構成の後半は作者が死んだため未完に終わる

ジャン・パウル
ロマン主義と古典主義の間に位置する作家とされる。代表作『巨人』はマーラーの愛読書で交響曲第1番の標題として使っている

作家ゆかりのスポットへ

マウルブロン修道院

ヘッセが進学し、すぐに脱走した進学校。この過程は『車輪の下』などの作品で知ることができる。

DT-IMG_6443

マウルブロンの修道院群

現地名:
Klosteranlage Maulbronn
住所:
Klosterhof 5
地図を見る »
アクセス:
SバーンBretten-Muhlacker ブレッテン・ミュールアッカー駅からバスMaulbronn マウルブロン下車、徒歩10分
TEL:
07043-9266-10
営業時間:
9:00~17:30、11~2月9:30~17:00
定休日:
11~2月の月曜 
Webサイト:
http://www.kloster-maulbronn.de

ゲーテ・ハウス(フランクフルト)

ゲーテの生家でがライプツィヒ大学に入学するまで暮らした。当時の様子がわかる空間。

DT-IMG_0552

ゲーテ・ハウス(フランクフルト)

現地名:
Goethe-Haus
住所:
Großer Hirschgraben 23-25
地図を見る »
アクセス:
UバーンWilly-Brandt-Platzヴィリー・ブラント・プラッツ駅から徒歩3分
TEL:
069-138800
営業時間:
10:00~18:00(日曜、祝日は~17:30)
定休日:
無休 
Webサイト:
http://www.goethehaus-frankfurt.de

ミヒャエル・エンデ博物館

各国で翻訳された『モモ』や『はてしない物語』など、著作約30作品の初版本や遺品などを展示している。

DT-IMG_1141

ミヒャエル・エンデ博物館

現地名:
Michael Ende Museum
住所:
Internationalen Jugendbibliothek, Schloss Blutenburg, Seldweg 15
地図を見る »
アクセス:
SバーンPasing パージング駅からバスSchloss Blutenburg シュロス・ブルテンブルク/ Blutenburg ブルテンブルク下車、徒歩5分
TEL:
089-8912110
営業時間:
14:00~17:00
定休日:
月・火曜 

グリム兄弟の家

幼少期を過ごしたシュタイナウにある家が博物館になっている。

DT-germany_steinau 014

グリム兄弟の家

現地名:
Brüder Grimm Haus
住所:
Brüder-Grimm-Straße 80, Steinau an der Straße
地図を見る »
アクセス:
ドイツ鉄道Steinau シュタイナウ駅から車で5分
TEL:
06663-7605
営業時間:
10:00~17:00
定休日:
クリスマスから年始の1週間 
Webサイト:
http://www.brueder-grimm-haus.de

グリムヴェルト

30年以上暮らしたカッセルにある博物館。2015年リニューアル。

DMA-01_GRIMMWELT Außenansicht Eingang und Treppenaufgang, 2015, Foto J.Bitter

グリムヴェルト

現地名:
Grimmwelt
住所:
Weinbergstraße 21
地図を見る »
アクセス:
ドイツ鉄道Kassel Hbf.カッセル中央駅から徒歩15分
TEL:
0561-5986190
営業時間:
10:00~18:00(金曜は~20:00)
定休日:
月曜 
Webサイト:
http://www.grimmwelt.de

ゲーテ・ハウス(ワイマール)

ゲーテが亡くなるまでの20年過ごした家。息を引きとった寝室も公開されている。

DT-Weimar20121020_160

ゲーテ・ハウス(ワイマール)

現地名:
Goethes Wohnhaus
住所:
Frauenplan 1
地図を見る »
アクセス:
バスGoetheplatzゲーテプラッツ下車、徒歩8分
TEL:
03643-545400
営業時間:
9:30~18:00(10月中旬~3月は~16:00)
定休日:
月曜 

観光情報を観光地ごとに紹介する雑誌スタイルの旅行ガイドブック「まっぷるマガジン」。その取材スタッフや編集者が足で集めた「遊ぶ」「食べる」「買う」「見る」「泊る」のおすすめ情報をご紹介しています。

奥付:
この記事の出展元は「トラベルデイズ ドイツ」です。掲載されているデータは、2015年12月〜2016年3月の取材・調査によるものです。掲載している情報、商品、料理、宿泊料金などに関しては、取材および調査時のもので、実際に旅行される際には変更されている場合があります。 最新の情報は、現地の観光案内所などでご確認ください。

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

この記事のタグ