2017年12月20日

ドイツ

ドイツの歴史カンタン講座 芸術&建築

by Fish & Tips

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ドイツでは長い歴史のなかで、さまざまな国が興隆、衰退をくりかえし近隣の国々の影響を受けながら多様な文化を育んできた。観光で訪れる街をさらに楽しむためにもドイツの芸術や文学、建築など歴史のおさらいをしてみよう。

音楽 Musik

世界中の音楽好きの人々から愛されるドイツのクラシック音楽だが、隆盛の時代が訪れたのは17世紀のバロック期に入ってからだ。以降はバッハやベートーヴェンなど、誰もが知る偉大な作曲家がキラ星のごとく現れ、歴史に残る楽曲を作った。

中世〜16世紀 バロック以前のドイツ音楽

12〜13世紀には宮廷音楽として恋や愛を歌うミンネゼンガーが活躍していた。この伝統は14世紀頃のマイスタージンガーという職匠歌唱者に受け継がれる。16世紀にはルターの宗教改革後、ドイツ語による賛美歌が普及した。

17世紀初頭〜18世紀前半 バロック期

ドイツ語による音楽が普及しはじめ、その発展は「音楽の父」と賞賛されるバッハの登場により決定的なものとなる。代表曲は『マタイ受難曲』、『G線上のアリア』など。教会音楽としてオルガンなどを用いたものも多く、チェンバロなどによる通奏低音の技法が特徴的。

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バッハ Johann Sebastian Bach (1685〜1750)

アイゼナハで音楽の名家に生まれる。1000以上もの曲を作り、音楽の父と称されるドイツクラシック音楽の原点。高い論理性と完成度で知られる。

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ヘンデル Georg Friedrich Händel (1685〜1759)

ハレに誕生。イタリアで修業したあと、おもにロンドンで活動し、最終的に帰化した。オペラなどの劇場音楽を得意とし、オラトリオ『メサイア』などが有名。

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バッハが教会付属指揮者として活躍したライプツィヒのトーマス教会

18世紀中期〜19世紀前半 古典派

オーストリア・ウィーンの作曲家たちが活躍したことからウィーン古典派と呼ぶこともある。ハイドンは欧州各国の音楽の美点を取り入れたソナタ形式を確立させ、モーツァルトがそこに音楽的な彩りを加え、ベートーヴェンが完成させたといわれる。交響曲や協奏曲の形式が多いのも特徴。

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ハイドン Franz Joseph Haydn (1732〜1809)

29歳のときよりエステルハージ家の楽長職を約30年間務めた。作曲数の多さから交響曲の父と呼ばれる。ドイツ国歌の旋律は彼によるもの。

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モーツァルト Wolfgang Amadeus Mozart (1756〜1791)

ザルツブルク生まれ。幼い頃から才能を発揮し、神童と呼ばれた。ピアノ曲からオペラまで幅広く華やかな作品を作り続けたが35歳で夭折。

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ベートーヴェン Ludwig van Beethoven (1770〜1827)

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バート・メルゲントハイムにあるベートーヴェンハウス

19世紀初期〜20世紀前半 ロマン派

当時の文学のロマン派とも呼応し、主観的・個性的で感情に重きを置いた作品が生み出された。この頃に名作オペラも数々誕生した。

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ワーグナー Wilhelm Richard Wagner (1813〜1883)

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シューマン Robert Alexander Schumann (1810〜1856)

ザクセン州生まれ。前期ロマン派の代表的な作曲家。ピアノ講師フリードリヒに師事したのち『トロイメライ』などを作曲。鋭い表現力を備えた旋律が特徴。

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ブラームス Johannes Brahms (1833〜1897)

ハンブルク生まれ。伝統を重んじた作風で知られ、バッハ、ベートーヴェンと並び「ドイツ音楽の三大B」と称される。『ワルツ』、『子守歌』などを作曲。

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R. シュトラウス Richard Georg Strauss (1864〜1949)

ミュンヘン生まれ。後期ロマン派の代表的な音楽家として知られ、『サロメ』、『エレクトラ』などのオペラや交響詩を作曲した。優秀な指揮者としても有名。

 

●ほかにも有名な作曲家たち
メンデルスゾーン/ブルックナー/マーラー

19世紀後半〜20世紀半ば 現代音楽

十二音技法など新しい作曲技法を追求した新ウィーン楽派が20世紀初頭に活躍。その後世界初の電子音のみの音楽がドイツで作曲された。

 

シェーンベルク Arnold Schönberg(1874〜1951)

新ウィーン楽派の代表的メンバー。ウィーン生まれのユダヤ人。

 

シュトックハウゼン Karlheinz Stockhausen(1928〜2007)

ケルン郊外出身。電子音を利用した前衛的な音楽で知られる。

20世紀後半〜 大衆音楽

1970年代に4人組の「クラフトワーク」がテクノポップを展開。世界的人気を得た。ドイツは今もエレクトロ・ミュージックが盛んでクラブやイベントも多い。70〜80年代のロック全盛期には「スコーピオンズ」、「ハロウィン」などのジャーマン・メタルも人気を博した。

文学 Literatur

宗教家のマルティン・ルターによってドイツ語聖書が出版されると、ドイツ語による文学作品も出現し始める。18世紀にゲーテという世界的スターが生まれると、後を追うように稀代の詩人や小説家が登場。現在まで読み継がれる名作が誕生した。

中世〜16世紀 ゲーテ以前のドイツ文学

中世の11〜14世紀には宮廷文学が盛んとなる。英雄伝説を土台とする『トリスタンとイゾルデ』、『ニーベルンゲンの歌』、『パルシファル』などが知られる。また、ミンネザンクと呼ばれる叙情詩も発達。16世紀にマルティン・ルターによる宗教改革が始まり、聖書をドイツ語に翻訳。民衆のための読本も人気が高く、『ティル・オイレンシュピーゲル』などが有名。

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ハンス・ザックス Hans Sachs (1494〜1576)

マイスタージンガー。ルターと新時代を讃える『ヴィッテンベルクの鶯』で知られる。教会を批判する内容の歌を次々と発表した。

18世紀後半〜19世紀初頭 ワイマール古典主義

18世紀の啓蒙主義の反動でシュトルム・ウント・ドランクという運動で、支配への抵抗を昇華させたゲーテとシラー。彼らが中心となり古典作品を基盤に人文主義的な作品を完成させた。ほか、カール・フィリップ・モーリッツやフリードリヒ・ヘルダーリンなど。

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ワイマールの国民劇場前のゲーテ(左)とシラー(右)の銅像

 

ゲーテ Johann Wolfgang von Goethe (1749〜1832)

 

シラー Johann Christoph Friedrich von Schiller (1759〜1805)

劇作家にして詩人で、ゲーテの素晴らしい相棒としても知られる。肉体的・精神的自由を求める作品は処女作の『群盗』や『ウィルヘルム=テル』などが代表作。

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ジャン・パウル Jean Paul (1763〜1825)

ロマン主義と古典主義の間に位置する作家とされる。代表作『巨人』はマーラーの愛読書で交響曲第1番の標題として使われている。

18世紀終盤〜19世紀前半 ロマン主義

合理主義に対し感受性など個人の体験や自由を重要視する。初期、後期などに分類でき、初期の代表的作家が『青い花』で知られるノヴァーリス。後期はホフマンが代表的だ。ほかティーク、アイヒェンドルフ、ベッティーナなど。

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ノヴァーリス Novalis (1772〜1801)

代表作『青い花』はロマン主義小説を代表する作品だが、2部構成の後半は作者がわずか28歳で死んだため未完に終わっている。

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グリム兄弟 Brüder Grimm

 

E.T.A.ホフマン Ernst Theodor Amadeus Hoffmann (1776〜1822)

バレエ作品の原作『くるみ割り人形とねずみの王様』が有名。『砂男』、『牡猫ムルの人生観』などが代表作。自動人形やドッペルゲンガーなど奇妙なモチーフを使った幻想文学作品が特徴。

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ハイネ Christian Johann Heinrich Heine (1797〜1856)

『旅の絵』など美しい紀行文を書いたが、一方で政治詩『ドイツ冬物語』なども発表。フランスに亡命した。

 

トーマス・マン Paul Thomas Mann (1875〜1955)

『魔の山』、『ヴェニスに死す』、『トニオ・クレーガー』が代表作。スイスやアメリカに亡命した。1929年にノーベル文学賞を受賞。

 

ヘッセ Hermann Hesse (1877〜1962)

ドイツ南部のカルフ生まれ。青年期に精神的に不安定な時期を過ごしたが『車輪の下』、『デミアン』、『ガラス玉演戯』などの傑作を残す。

 

カフカ Franz Kafka (1883〜1924)

現在のチェコ出身だが、作品はドイツ語により書かれた。『変身』や『審判』など不条理を描いた不思議な雰囲気の作品が多い。

 

ブレヒト Bertolt Brecht (1898〜1956)

アウクスブルク生まれ。ミュンヘン大学へ通ったのち、代表作の『三文オペラ』、『ガリレイの生涯』などを発表。各国へ亡命したが戦後東ドイツに戻った。

ドイツの哲学者

18世紀に『純粋理性批判』を発表したカントはドイツ観念論・哲学の祖とされ、近代において影響力の高い哲学者のひとり。カントと対称的な「精神現象学」を唱えたヘーゲル、「資本論」のカール・マルクス、「神は死んだ」のニーチェなどドイツには高名な哲学者が多い。

 

ギュンター・グラス Günter Grass (1927〜2015)

『ブリキの太鼓』で一躍有名になった現代作家。1999年にノーベル文学賞を受賞。

 

ミヒャエル・エンデ Michael Ende (1929〜1995)

『モモ』、『はてしない物語』など日本でも愛される児童文学の作者。ガルミッシュ・パルテンキルヒェン生まれ。

美術 Kunst

ドイツの美術は、中世はロマネスク・ゴシック美術が教会を中心に栄えた。近世にはイタリアのルネサンスに影響を受けたデューラーが活躍、宗教画や版画を芸術的高みへと引き上げた。20世紀初頭には表現主義が独自に発展した。独特の色彩感覚が美しい。

中世〜16世紀 ルネサンス以前のドイツ美術

ほかのヨーロッパの国々と同じく宗教美術を起源とする。ステンドグラスから祭壇、フレスコ画など各地の職人たちが芸術性を高めて制作。ケルン画派ではシュテファン・ロホナが有名。

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16世紀初頭〜18世紀後期 ルネサンス

イタリアで生まれたルネサンスを実際に訪れて体験し、ドイツへ持ち込んだのがニュルンベルク出身のデューラーだ。作品はミュンヘンのアルテ・ピナコテークなどで鑑賞可能。優美な曲線が美しいクラナッハはデューラーの影響を受けている。

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ニュルンベルクのアルブレヒト・デューラー・ハウス

 

デューラー Albrecht Dürer (1471〜1528)

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ホルバイン Hans Holbein (1497〜1543)

アウクスブルク生まれ。エラスムスやトマス・モアを描いた肖像画家として知られる。木版画の連作『死の舞踏』の作者としても有名。

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リーメンシュナイダー Tilman Riemenschneider (1460頃〜1531)

彩色を施さず、素材の質感を生かす彫刻作品を制作。各地の教会などに残っている。ヴュルツブルクでの活動で市長も務めた。

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クラナッハ Lucas Cranach der Ältere (1472〜1553)

なめらかな曲線で描かれた女性の裸体画が特徴的な画家。ヴィッテンベルクに工房があり、さまざまな祭壇も手がけている。

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エルスハイマー Adam Elsheimer (1578〜1610)

フランクフルト生まれ。レンブラントやルーベンスにも影響を与えた銅版画家。風景を多く描き、明暗法を使った照明効果が革新的だった。

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カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ Caspar David Friedrich (1774〜1840)

19世紀ロマン主義の風景画家。静謐さを感じさせる崇高な風景画に宗教的な含意を入れた。ドレスデンにて死没。

20世紀初頭〜半ば ユーゲントシュティール

19世紀末のミュンヘンで、フランスのアール・ヌーヴォーやウィーン分離派などと呼応して生まれた芸術運動。美術、家具、調度品、食器といった多彩な分野のデザインに取り入れられた。

20世紀初頭〜半ば ドイツ表現主義

ドレスデンで1905年に結成されたグループ「ブリュッケ(橋)」は、それまでの印象派の写実性に対して、個人の内面を描くことを主題とした。ミュンヘンで立ち上がったカンディンスキーらの「青騎士」も、内面の表現を目指した。どちらも短命だったがドイツ固有の発展を遂げた時代だった。

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カンディンスキー Wassily Kandinsky (1866〜1944)

ロシア生まれ。モスクワ大学で法律を学び、1896年にミュンヘンへ。芸術に理論的な基盤を築いた。作品に『穏やかな飛躍』などがある。

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キルヒナー Ernst Ludwig Kirchner (1880〜1938)

ドイツ表現主義の代表的作家。フォービズムやアフリカ民族美術の影響がみえる力強い色彩とタッチが特徴。晩年はスイスに移住した。

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ミュンヘンのレンバッハ美術館ではパウル・クレーやカンディンスキーなど青騎士の作品を展示

 

エミール・ノルデ Emil Nolde (1867〜1956)

ブリュッケにも属したが、すぐに脱退した一匹狼の表現主義作家。1941年にナチスにより芸術活動を停止された。鮮やかな色彩が特徴。

 

マルク Franz Marc (1880〜1916)

ミュンヘンでカンディンスキーらとともに「青騎士」を盛り上げたひとり。馬や牛などの動物をやさしくのびやかな色彩で描いた作家。

建築 Architektur

ドイツには歴史的価値の高い街並みが残り、世界遺産も多い。とくに街の中心となる大聖堂や城、市庁舎は一見の価値がある。建築史の流れはほかのヨーロッパの国々とほぼ同じで、年代的にはイタリアやフランスよりやや遅れて導入されている。

9〜12世紀 ロマネスク様式

ヨーロッパのキリスト教会建築として発展した様式。石やレンガで造ったアーチを連続させたり、回転させて造る円形の天井(ヴォールト)などの技術が誕生した。ヒルデスハイムの聖ミカエル教会、ハインリヒ4世が建造した大聖堂(マインツ、ヴォルムス、シュパイヤー)など。

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ビザンチン様式も混在するアーヘンの大聖堂

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2015-02-28 17.34.59, by ventripat, CC BY-ND

ヒルデスハイムの聖マリア大聖堂

12〜15世紀 ゴシック様式

垂直性が意識された尖塔が特徴的。内部は梁の構造が工夫され、より高い天井、より広い窓をとることができるようになった。窓にはステンドグラスがはめ込まれ、荘厳な空間に。ドイツのゴシック様式は、初期のものにはロマネスク様式が混在している。

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ケルンの大聖堂

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ニュルンベルクの聖ローレンツ教会

15世紀〜16世紀中頃 ルネサンス様式

14世紀にイタリアで起こった文化運動で、古代ローマを規範とした「再生」を意味する。ドイツで開花したのは16世紀頃と遅い。シンメトリーを造形の基本とした調和のとれたスタイル。

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ブレーメンのマルクト広場の市庁舎

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アウクスブルクの市庁舎

17世紀前半〜18世紀後期 バロック様式

「歪んだ真珠」を意味する。劇的な効果を狙って曲線や曲面を使ったダイナミックな造形、過剰な装飾が特徴。ドイツではほかのヨーロッパ諸国のものと比べて装飾がひかえめ。より優美な印象のロココ様式が混在する建築物もある。

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ニンフェンブルク城の華麗な装飾

18世紀後半〜19世紀 新古典主義

バロックの過剰さの反動で、古代ローマやギリシャの建築を手本とした威厳ある様式が隆盛する。古代建築様式のどっしりした円柱、ドームが特徴でベルリンには新古典主義時代の建物が多く残る。

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ベルリンのノイエ・ヴァッヘ(上)。ベルリンのブランデンブルク門(下)。いずれもドーリア式の円柱が印象的

19世紀後半

この頃ドイツでは過去の建築様式にのっとりオマージュのように派生した建築が生まれることがあった。ノイシュヴァンシュタイン城のネオ・ロマネスク様式や、シュヴェーリンの宮殿のルネサンス様式などだ。

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ノイシュヴァンシュタイン城

20世紀 モダニズム建築

権力者のためではなく、一般市民のための建築を造ろうとする近代建築運動により生まれた。ワイマールで設立された現代美術とデザインの総合造形学校・バウハウスにより、機能主義的なフォルムが推し進められた。ベルリンの近代集合住宅群は世界遺産に登録されている。

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ベルリンのジードルング・シラーパルク

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筆者 : Fish & Tips

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奥付:
この記事の出展元は「まっぷるドイツ ロマンティック街道」です。掲載されている電話番号、営業時間、料金などのデータは2017年6月〜8月現在のものです。いずれも諸事情により変更されることがありますので、ご利用の際には事前にご確認ください。また、掲載の商品は取材時のもので、現在取り扱っていない可能性があります。
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