> ヴァルサインとラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソ

2016年10月5日

スペイン

ヴァルサインとラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソ

by 佐助

ローマの水道橋とディズニーの白雪姫城のモデルになったお城があるセゴビアについては、スペインのガイドブック全てに載っていて、訪れる人もたくさんいますね。なのにセゴビアに劣らず美しいヴァルサインとラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソ(以後ラ・グランハと称する)を知ってる人は少ないのじゃないですか?バスでセゴビアからヴァルサインまでは約30分、ラ・グランハまでは20分で着きます。

マドリッドからセゴビアまでは、新幹線が出ていますが、道中の美しい景色を見るにはバスで行くに限ります。到着ターミナルから、移動無しでヴァルサイン行きのバスに乗れますし。(ラ・グランハはヴァルサインの途中)

★ヴァルサイン(Valsaín)

約30年前、私がスペインに来た当初に友人の車でセゴビアに行き、帰りに走り抜けたのが、このヴァルサイン。横にいた私が、広大な草原にたくさんの馬が放牧されているのを見て、「馬がいっぱいいた!」と言うと「そんなの見てない、見たいな。」と後戻りしたのです。友人は迷子になっていて、焦りまくりながら運転していたのです。

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by Txema Campillo, CC BY-NC

ボロ小屋があり、おじさんと何頭かの馬がいたので、「馬に乗ることは出来る?」と聞くと、「あぁ、乗せるよ。」という答え。その場で乗ることになりましたが、なんと先導してくれたのは息子の7歳の男の子でした。名前はボルハ。もう37歳ですね。それからというもの、毎週毎週馬に乗って森の中を周るために、ヴァルサインに通ったものです。

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by Txema Campillo, CC BY-NC

さて、私のことはさておき、ヴァルサインについてです。
マドリッドから北に75㎞、標高2428mのグアダラマ山脈(Sierra de Guadarrama)の北側1180mに位置する村です。この地にエンリケ3世(Enrique III:病弱王1390~1406-12-25即位)が、森の宮殿を建設し、フェリッペ2世(Felipe II:書類王1556-1-16~1598-9-13)が豪華な宮殿に建て替えます。王族たちが夏に訪れ、広大な森で狩猟などを楽しんでいましたが、1682年8月12日の大火事でこの宮殿は、ほぼ全壊し、現在は残骸だけが姿を見せています。長い間、すたれきった村になっていましたが、マドリッドから近く、山あり谷ありの大自然の中で自転車や馬で散策が出来るとあって、夏や紅葉のきれいな秋は大変な賑わいです。

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by ambientoso, CC BY-NC
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by ambientoso, CC BY-NC

ヴァルサインに行ったら、是非馬に乗って下さいね。誰も手綱を引っ張ってくれず、最初から自分だけで馬と行くのですが(馬に乗った先導者はいます)、馬はお利口さんですから、初心者だと分かると、ゆーっくりゆーっくり(つまり、嫌々)歩いてくれますよ。

★ラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソ(La Granja de San Ildefonso)

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by guillermoenflickr, CC BY

ラ・グランハには水道橋も白雪姫城もありませんが、グアダラマ山脈の中腹1193mに造られた、きらびやかな王宮とその庭園は目をみはるばかりです。マドリッドから80㎞離れ、セゴビアからは11㎞で、バスに乗ったら20分で着きます。

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by climens, CC BY

エンリケ4世(Enrique IV:不能王1454-7-20~1474-12-11)がヴァルサインを訪れた際に、わずかに離れたこの土地に宿泊所と聖イルデフォンソの庵を造ったのが始まりです。次の女王イサベル1世(Isabel I:カトリック女王1474-12-13~1504-11-26)が、セゴビアのパラル修道院(Monasterio de Parral)に寄付し、修道士たちは夏になると、宿泊所を改善しながら、セゴビアより涼しいこの土地で農作物などを作って働きました。

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by climens, CC BY

さて、スペイン・ハプスブルグ家のカルロス2世(Carlos II:1665-9-17~1700-11-1)が子供を残さず亡くなり、いろいろ事情があってフランスのブルボン家から王様が来ます。フランス王のルイ14世は、何とかスペインを自分のものにしようと、一番従順な孫を送り込むのです。このフェリッペ5世(Felipe V:1700-11-6~1724-1-15,1724-9-6~1746-7-9)は、最後までスペインを好きになりませんでしたが、「自分はスペインの王である。」と祖父の言いなりにならなかったので、現在のスペインがあるのでしょう。

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by M. Martin Vicente, CC BY

キンキラキンのヴェルサイユ宮殿育ちのフェリッペ5世は、部屋は小さく、何の飾り気もないハプスブルグ家の宮殿に住むのが嫌で嫌でたまらず、ラ・グランハの土地を買い上げ、ヴェルサイユ宮殿を小型にした王宮の建設を始めます。バロック様式で、1721年から造り始め、1724年に完成。息子に王位を譲り、ラ・グランハにウキウキ引っ越しました。が、王になったルイス1世(Luis I:1724-1-15~1724-8-31)は、天然痘にかかり、8ヶ月足らずで亡くなってしまいます。そこでフェリッペ5世は仕方なく王に戻るわけです。マドリッドの現在の王宮は、「ハプスブルグ家の宮殿で、1734年のクリスマスイブの晩にパーティーをしていて火事になり建て直した。」ということになっています。なってはいますが、、、。

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by MUESCA61, CC BY-NC

さあ、見事な美しさが堪能できるラ・グランハの町に行きましょう。つくづく王家の土地だというのが感じられますよ。世界中に輸出している王立ガラス工場(Real Fábrica de Cristales)もあれば、それとはずれた、バカ騒ぎの祭り(Fiesta de San Luís)もありますが。

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by Aldeana, CC BY-NC-ND
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by Aldeana, CC BY-NC-ND

3か所共に、食事がとても美味しいのは有名です。子豚の丸焼き(Cochinillo asado)は、セゴビアが発祥地ですね。花豆の煮物(Judiones)はラ・グランハの郷土料理です。ヴァルサインで牛肉の窯焼き(Ternera asado)はいかがでしょう。

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by blueant808, CC BY-ND
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by jlastras, CC BY

★最後に...

夏は夜の10時まで明るいスペインです。セゴビアを充分楽しんだ後に、ヴァルサインとラ・グランハ・デ・サン・イルデフォンソの両方にゆっくり行っても、まだ明るいうちにマドリッドに戻れます。

筆者 : 佐助

スペインのマドリッドで、 観光ガイドを30年ほどしています。皆さんが行きたくなるような、素敵な所をたくさんご紹介出来ると思います。