街中でアートを楽しむ、壁画の町リヨン

フランス第三の人口を誇るリヨンは、ソーヌ川とローヌ川に囲まれたプレスキルを中心に、オレンジ色の屋根の建物がひしめく美しい町です。町の起源はローマ時代にまで遡り、その後もフランス国内の重要な都市の一つとして発展を遂げ、商業の町、絹の町、美食の町としても有名です。この町を散歩していると良く見かけるのが建物の壁に描かれた壁画です。それもそのはず、リヨンの壁画はヨーロッパでは有名で、その数は世界でもトップクラスに入ります。今回はリヨンの壁画の魅力についてお伝えしたいと思います。

リヨンの壁画の特徴

一口に壁画と言っても様々なものがありますが、リヨンの壁画の特徴はだまし絵が多い事です。目の錯覚を巧みに利用し、あたかもそこに描かれたものが存在するかの様な描き方をしている作品が多いので、壁という大きなキャンバスに描かれていても、自然と街並みに溶け込んでいる印象を受けます。

アーティスト集団「シテ・クレアシオン」

リヨンの町の壁画の多くを手掛けているのが「シテ・クレアシオン」というアーティスト集団です。このグループは1978年に結成され、フレスコ画や壁画、だまし絵をリヨン都市圏で描いていました。次第にその活躍の場は世界へと広がり、今ではこの分野のリーダー的な存在として、世界中で600以上の壁画作品を手掛けています。

リヨン市内で見られる人気の壁画

それでは、リヨン市内で見る事の出来る有名な壁画をご紹介していきましょう。

La fresque des Lyonnais（リヨン人の壁画)

ih1449.JPG, by Sangre-La.com, CC BY

ソーヌ川の近くサンヴァン通り（quai St Vincent）とマルティニエール通り（rue Martinière）の角にある壁画です。建物の壁いっぱいに7階建てのアパートの絵が描かれています。

Berühmte Lyoner Persönlichkeiten, Antoine de Saint-Exupéry et Le Petit Prince, by dierk schaefer, CC BY

良く見るとバルコニーに佇んでいるのは、星のおうじさまとその作者アントワーヌ・ド・サン＝テグジュペリ、映画の父と呼ばれるリュミエール兄弟、そして一階にはフランス料理界の大御所ポール・ボキューズ・・・とリヨンに縁のある著名人が約30名描かれています。意外な人物のリヨンとの関係を知る事が出来る、興味深い壁画です。

Mur des canuts（カニュの壁)

, by dierk schaefer, CC BY

古くからリヨンの主要産業であった絹織物産業が栄えた、クロワルース地区のカニュ大通り（boulevard des Canuts）にある壁画です。壁画の名前のカニュとは絹織物職人の事を指します。この壁はヨーロッパの壁画の中でも最大級のもので、1987年に描かれました。描かれているはこの地区の様子ですが、特筆すべきはこの壁画は今までに何度か描きかえられているのですが、その度にテーマや要素はそのままで時代を反映して描きかえられている点です。

Guignol, by dierk schaefer, CC BY

例えば以前の壁画で子供だったが人物が成長している等。壁画から時代の変遷を追ってみるのも楽しいかもしれません。

La bibliothèque de la cité（町の本棚)

Lyon – Trompe l’oeil : Livres, librairie, biblio café, by ActuaLitté, CC BY-SA

壁面にたくさんの本が描かれたこの壁は、リヨン美術館の近くにあるプラティエール通り（Rue de la Platière）にあります。これらの本はリヨンやこの地方に縁のある著者のもので、たくさんのテキストの抜粋や引用が描かれています。すぐ近くのソーヌ川沿いでは、週末になると古本市が開催されますので、古本市とこの壁画を合わせて楽しむのも良いですね。